タイムテーブル
2026年3月16日(月)
| 11:00 ~ | 受付開始 | 農学部弥生講堂一条ホール |
| 13:00 ~ 13:30 (休憩込み) | 開会式: 藤井 輝夫 東京大学総長 齊藤 延人 東京大学理事・副学長 | 農学部弥生講堂一条ホール (オンラインでも視聴可) |
| 13:30 ~ 14:30 | 特別講演: 「共用がつなぐ教育研究の未来 ー北海道大学の研究基盤と技術職員が生み出す価値ー」 <要旨> 岡 征子 北海道大学技術専門員 北海道大学技術連携統括本部(ITeCH)総合研究基盤連携センター 副センター長 | 農学部弥生講堂一条ホール (オンラインでも視聴可) |
| 14:30 ~ 15:30 | パネルディスカッション: 「研究基盤整備における北大の先行事例と東大の挑戦 ― 技術職員がつなぐ未来」 網塚 浩 北海道大学副学長・ITeCH 本部長 岸 利治 東京大学執行役・副学長 岡 征子 北海道大学技術専門員・ITeCH 総合研究基盤連携センター副センター長 秦 裕子 東京大学医科学研究所 シニアエキスパート(技術)・第6回東京大学技術発表会実行委員長 モデレーター:鈴木 博之 東京大学リサーチ・アドミニストレーター推進室 プリンシパルURA | 農学部弥生講堂一条ホール (オンラインでも視聴可) |
| 15:30 ~ 16:00 | コーヒーブレイク | |
| 16:00 ~ 18:00 | ポスター発表 (ポスター発表プログラム) | 農学部弥生講堂 |
| 18:00 ~ 20:00 | 情報交換会 | 農学部弥生講堂 |
2026年3月17日(火)
| 10:00 ~ 12:00 | 口頭発表 (口頭発表プログラム) | 農学部 1 号館第 8 講義室、農学部 2 号館化学第 1 講義室 (オンラインでも視聴可) |
| 12:00 ~ 13:30 | 昼食休憩 | |
| 13:30 ~ 16:00 | 口頭発表 (口頭発表プログラム) | 農学部 2 号館化学第 1 講義室 (オンラインでも視聴可) |
| 閉会式 |
特別講演
共用がつなぐ教育研究の未来 ー北海道大学の研究基盤と技術職員が生み出す価値ー
北海道大学技術連携統括本部総合研究基盤連携センター
副センター長 岡 征子
詳細 要旨はこちら
1.研究基盤整備の歴史とITeCH-GFCの誕生
北海道大学では、研究基盤の整備と機器共用体制の構築を、長年にわたり大学運営の重要戦略として位置づけてきた。演者が所属する技術連携統括本部(以下ITeCH〈アイテック〉)総合研究基盤連携センター(以下、GFC)の歩みは、1955年の元素分析室に端を発し、1979年の機器分析センター設置、2009年の共用機器管理センター、2016年のグローバルファシリティセンター(GFC)を経て、2025年の技術支援本部との統合により誕生したITeCH-GFCへと発展してきた。この変遷は、北海道大学における研究基盤整備の歴史そのものであり、時代に応じた共用体制の拡充と技術職員組織の再構築が連続的に進められてきた証である。1)
2.北海道大学が受け継いできた二本柱の理念
機器分析センター設立以来、一貫して受け継がれてきた理念は、「専門技術者による高度かつ信頼性の高い分析支援」と「研究者自身が装置を操作し、学びながら成果を得る自己操作型利用」の両立である。前者は現在の「機器分析受託サービス」、後者は「オープンファシリティサービス」として継承され、これら二つの柱によって北大の研究基盤文化の根幹は形づくられてきた。現在はGFC総合システムを核とした一元的な運用環境を備え、機器の予約・会計・管理・データベース運用まで統合する体制が整っている。
3.共用基盤の進化と高度分析技術が生み出す研究価値
オープンファシリティは十年以上の運用を重ね、学内外の多様な研究者が利用する共用プラットフォームへと成長し、320台を超える登録装置を有して学内のみならず、地域・全国をつなぐ共用基盤としての機能を果たしている。
一方で機器分析受託は、長年にわたり北海道大学が強みとしてきた支援モデルであり、質量分析、元素分析、アミノ酸組成分析、タンパク質配列分析など高度分析を、専門技術職員が年間6,000件以上実施し、300名以上の研究者を支えている。その質の高さは学内外からも評価され、2020年度の文部科学大臣表彰(研究支援賞)受賞へとつながっている。
4.技術職員組織の改革とITeCHの新たな仕組み
これらの研究基盤を支える中核が、技術職員の存在である。かつては部局ごとに分散所属していた技術職員は、2018年の全学一元化を経て2025年にITeCHへと統合された。現在では約230名の技術職員が分析系・実験実習系・医学動物実験系・工作観測系・安全衛生系・フィールド系・情報基盤系など多様な専門領域を担い、日常技術支援から高度分析・装置開発・教育支援・社会連携まで幅広く教育研究推進のための役割を果たしている。とりわけITeCHでは、縦軸(配置先の技術部門)×横軸(全学的な技術グループ)の二軸構造を採用し、専門性の深化と全学的な技術連携の両立を図る仕組みが整えられた。また、研究基盤と技術人材マネジメントを担う事業統括室(プログラムマネジメント室)を設置し、2週間に一度の会議を繰り返す中で、評価やキャリアパスの構築など、運用面のさらなる肉付けと実質化を図っている。
さらに2026年3月には、戦略的技術リーダーである テクニカルサイエンティスト(TS)が誕生し、学内外での高度技術提供や技術戦略立案に技術職員が主体的に参画する体制が始動する。このように、管理職の配置を含め、新たなキャリアパスの整備は、技術職員のやりがいと生産性を高め、自律的な成長と技術リーダー育成に向けた重要な改革でもある。
5.体制構築までの実現プロセス:課題と対話的調整
もっとも、こうした体制構築の過程では多くの課題にも直面してきた。例えば、機器共用に関して言えば、部局文化の違いによる共用ルール統一の困難さ、老朽化した設備の更新財源確保、技術職員の業務過多と育成時間の不足、エビデンス収集・システム運用に伴う負荷などである。これらに対し北海道大学は、様々な文部科学省事業の支援を受けてオープンファシリティプラットフォームの形成や設備供出者へのインセンティブ設計、いくつかのオープンユニットによる運営、GFCを統括部局として一括したGFC総合システムの運用サポートによる現場負担の軽減、設備市場による装置再循環など、持続可能な仕組みづくりに向けた改善を、可能な限りの対話と調整を経て積み重ねてきた。これまで研究設備供出に際しては、一定の基準を設けるものの、無理のない範囲で共用運営を依頼してきたが、今後はより組織的で責任ある共用体制へとギアアップしていく必要があると認識している。
また、長らく形骸化していた技術職員組織(技術支援本部)の改革・実質化にあたっては、まず組織化の目的が大学全体の教育研究力の強化に資するものであることを明確にし、そのうえで、技術職員の活躍を阻む要因を現場の棚卸しによって可視化し、課題解決として組織の実質化が不可欠であると関係者で共有した。特に、現場の技術職員と組織の長、大学執行部とのレポートラインが明確に構築されたことは大きい。中堅技術職員で構成される将来構想検討専門委員会による職場訪問や実態調査の結果は、技術支援本部長や担当理事にリアルタイムで共有され、それらを踏まえた理事による技術職員向け説明会、部局訪問による部局要望の聞き取りへとつながった。こうした一連の取り組みにより、慎重かつ迅速にITeCH設立へと踏み出すことができたものの、新組織はまさにスタートラインに立ったばかりであり、今後検討すべき事柄は山積している。組織としての成熟には継続的な改善と議論が不可欠である。
6.未来の研究基盤:共創型研究基盤への進化
今後、ITeCH体制のもとでは、データ駆動型研究やAI活用型設備管理など、研究基盤のデジタル化・高度化の検討が進むとともに、技術職員が研究基盤戦略をともに設計する「共創型研究基盤」への移行が期待される。共用機器・技術・情報を統合的に運用し、研究者・技術者・社会をつなぐ“技術を軸としたプラットフォーム”としてのITeCH・GFCの役割は、今後ますます大きくなるだろう。
7.おわりに:共用がつなぐ研究文化
本講演では、北海道大学が取り組んできた研究基盤整備、機器共用体制、技術職員の連携・育成の歴史と現在、そして、課題と今後の展望について紹介する予定である。こうした歩みは、多くの先人の努力の上に成り立つとともに、技術職員と研究者が共に築き上げてきた「共用がつなぐ研究文化」によって育まれてきた。今後も検討と改善を続けていく必要があり、未来の研究基盤をいかに形づくるかが問われている。 当日は、これまでの実践とこれからの方向性について、可能なかぎりご報告したい。
参考文献
1)北海道大学薬学部同窓会誌 芳香HISTORY-32 (2026)
https://www.pharm.hokudai.ac.jp/alumni/special/history_032.pdf