2022.03.04タイムテーブル

2022年3月7日(月)

10:30-11:30 見学会 柏キャンパス・各施設 (オンライン)
13:00-13:20 開会式オンライン
13:20-14:20 特別講演
「JRR-3の運転再開と中性子散乱によるガラスの低エネルギー励起研究」
物性研究所・附属中性子科学研究施設施設長 山室修 教授
14:20-14:30 休憩
14:30-16:00 シンポジウム
「技術系職員に求められる技術~その多様性と今起きている変化~」

2022年3月8日(火)

第1会場第2会場
9:35 -- 10:15口頭発表 (セッション 1) プログラム プログラム
休憩
10:30 -- 11:50口頭発表 (セッション 2)
昼食
13:15 -- 14:15口頭発表 (セッション 3) プログラム プログラム
休憩
14:30 -- 15:30口頭発表 (セッション 4)

2022.02.02特別講演

「JRR-3の運転再開と中性子散乱によるガラスの低エネルギー励起研究」

物性研究所・附属中性子科学研究施設

施設長 山室修
 2021年2月に2011年の東日本大震災以来停止していたJRR-3が10年ぶりに運転を再開しました。JRR-3は日本原子力研究開発機構(JAEA)が1990年に建設した本格的な研究用原子炉(熱出力20 MW)です。物性研究所の中性子科学研究施設は、JRR-3に大学(東大、東北大、京大)が設置している分光器の維持管理や高度化を行うとともに、全国共同利用の運営および利用者の実験支援を行っています。JRR-3の停止中も、分光器や試料環境設備の高度化、定期的な稼動試験などを根気強く続けてきました。その甲斐あって、分光器の運転再開は非常にスムースに行われましたし、10年前よりはるかに高性能化した装置もあります。例えば、非弾性散乱分光器AGNESでは、中性子導管のスーパーミラー化により中性子強度が5倍以上になりました。これ以外にも、スーパーミラー偏極子の設置により偏極中性子実験が可能になった装置や遮蔽体の非磁性化により強磁場下実験ができるようになった装置もあります。実際に全国共同利用を再開するうえで最も苦労したのは、10年前よりもはるかに厳しくなったJAEAの安全管理基準をクリアすることでした。実験作業や試料・機器持込にかかわるリスクアセスメント、利用者の安全教育、多量の書類作成などの辛い仕事がありました。以上に述べたような活動において、当施設の技術職員の多大なる貢献があったことは言うまでもありません。講演の前半では、当施設の紹介とともに、JRR-3の共同利用の再開に関する話をしたいと思います。
 講演の後半では、私が長年取り組んでいるガラスの低エネルギー励起の研究を紹介したいと思います。ここで言うガラスは、窓や食器などに使われているケイ酸(SiO2)を主成分としたガラスだけではなく、液体を急冷したときに生じる乱れた構造のまま凍結した固体全般を表す広義のガラスです。どのような液体でも(例えば水のような分子液体でも)、非常に速く冷やせばガラスになるので、ガラスは気体・液体・結晶に続く第4の状態とも言われています。ガラスの構造や物性は、結晶に比べるとほとんど理解されていません。それは、ガラスには結晶のような周期性(単位格子)がなく、構造が乱れているだけではなく不均一なので、実験でも理論でも、その取り扱いが非常に難しいからです。
 ガラスの低エネルギー励起は、ガラス転移と並んで、ガラスの重要な未解明問題です。結晶のフォノンは低エネルギーではデバイモデルで表されるのですが、ガラスでは普遍的に2-5 meV付近に、ボゾンピークと呼ばれる過剰でブロードな励起が現れます。その起源については未だ明らかにされていません。また、ガラスには周期性もブリルアンゾーンもないのですが、酸化物ガラスなどでは、フォノン分散のような異常な挙動が観測されます。この理由もよく分かっていません。私たちはこのような現象に対して、中性子散乱法を用いて研究しています。それは、中性子散乱が状態密度やフォノンの分散関係を調べるのに最適の手法であるからです。測定対象は単純な分子ガラスです。これは理論や計算機シミュレーションでも扱い易いからですが、分子ガラスはガラス転移温度が低く結晶化しやすいため、実験には多くの苦労があります。このようなガラスの研究を、できるだけ分かり易くお話しできればと思います。

2022.02.04シンポジウム

「技術系職員に求められる技術 ~その多様性と今起きている変化~」

【開催趣旨】
第4回東京大学技術発表会を開催するにあたり、実行委員会では「技術系職員に求められる技術」についてのシンポジウムを企画いたしました。
東京大学には多くの技術系職員が働いており、その職務の内容や持っている技術は多岐にわたっています。技術系職員が抱える問題やこれからの課題について考える際にも、その多様性を理解することは重要です。一方、技術系職員をとりまく状況は大きく変わっており、その職務や技術も変化を求められています。例えば技術職員の人数が減っていることにより、特に研究室所属の技術職員は後任の補充がされず減少している傾向にあります。それに伴い、研究室に所属していた技術職員が共通系の組織に移動する例も見られます。また、上席技術専門員の職ができるなど、技術組織の面からも状況は変わりつつあります。
本シンポジウムでは、様々な立場で働く5名の技術職員をパネリストに迎え、それぞれの職務への理解を深めつつ、時代背景なども含め、私たちに求められている技術は何か、議論したいと考えています。
多くの技術系職員の皆様にご出席いただき、活発な意見交換が行われることを期待いたします。

【シンポジウム開催日程】
  • 日時:2022年3月7日(月)14:30 ~16:00
  • 会場:オンライン開催
【パネリスト紹介】

〇森山彰久(大気海洋研究所、技術専門職員)
経  歴:1995年 海洋研究所 資源解析部門に着任、2010年より 大気海洋研究所 共同利用共同研究推進センター陸上研究推進室/広報室(兼務)
職務内容:共通実験施設(主担当4+副担当2)の管理・運営、データベース管理、広報室業務、ほか
発言趣旨:シンポジウム開催趣旨。2010年の海洋研究所改組にて、研究室配属を含む技術職員全員が1つの研究支援組織の所属になった事例についても紹介いたします。

〇亀尾 桂(大気海洋研究所 技術専門職員)
経  歴:2001年海洋研究所海洋底科学部門海洋底地質学分野採用
2006年海洋研究所観測研究企画室兼務
2010年改組により大気海洋研究所共同利用共同研究推進センター観測研究推進室在籍
2011年共同利用共同研究推進センター研究航海企画センター兼務
職務内容:共同利用観測機器(主に地学系)の保守管理・船上での運用保守、共同利用研究者と関係各所との調整、各種委員会の補佐
発言趣旨:国立大学の法人化、研究所の改組等による職務内容の変化について、自身の経験をもとにお話ししたいと思います。

〇犬飼 浩(農学生命科学研究科北海道演習林、農学技術部副技術部長、上席技術専門員)
経  歴:1987-2010年度北海道演習林、2011田無演習林、2012-14演習林統括技術長、2015-21北海道演習林、2021農学技術部 副技術部長・上席技術専門員
職務内容:北方天然林における持続的な森林利用に関する試験研究と森林管理全般。専門分野としてはウダイカンバの高品質材育成。
発言趣旨:演習林技術職員の業務と農学技術部組織について紹介する。上席技術専門員の職務に関して、個人的な現状と組織から求められる役割について述べる予定である。

〇猪目祐介(宇宙線研究所、技術職員)
経  歴:2018年 宇宙線研究所チェレンコフ宇宙ガンマ線グループに学術支援専門職員として着任
2021年 宇宙線研究所附属乗鞍観測所に技術職員として着任、神岡宇宙素粒子研究施設にて勤務
職務内容:センサー試験やハードウェアの設計・開発・組み立て、測定業務など
発言趣旨:宇宙線研究所における自身の現在の業務内容について紹介するとともに、前職から柏キャンパスと神岡施設という異なる場所・研究グループに技術職として勤務してきた経験も含めて、技術職員を目指した動機や実際に勤務して感じたことなどを述べる予定である。

〇浜田雅之(物性研究所 ナノスケール物性研究部門、技術専門職員)
経  歴:2001年 物性研究所 長谷川研究室に技術職員として着任
職務内容:走査プローブ顕微鏡に関する共同利用・技術開発・維持管理など
発言趣旨:発表者(浜田)は、一般にあまり知られていない今や絶滅危惧職である「研究室に所属する技術職員」に採用されてから約20年になる。その職務・変化等について、苦労話・雑談等を交えながら述べる予定である。


(c) 第4回東京大学技術発表会 実行委員会
東京大学総合技術本部