タイムテーブル

2024年3月18日(月)

11:00 ~ 受付開始 農学部弥生講堂一条ホール
13:00 ~ 13:20開会式 農学部弥生講堂一条ホール(オンラインでも視聴可)
13:30 ~ 14:30特別講演
「東京大学の設備施設共有の課題について」
東京大学連携研究機構マテリアルイノベーション研究センター 機構長 霜垣幸浩 教授 
14:45 ~ 17:30ポスター発表(ポスター発表プログラム)農学部弥生講堂アネックスセイホクギャラリー
18:00 ~ 20:00情報交換会 東大生協第二食堂

2024年3月19日(火)

09:30 ~ 12:00口頭発表(口頭発表プログラム)工学部2号館212号室(オンラインでも視聴可)
12:00 ~ 13:30昼食休憩
13:30 ~ 15:00口頭発表(口頭発表プログラム)工学部2号館212号室(オンラインでも視聴可)

特別講演

「東京大学の設備施設共有の課題について」

東京大学連携研究機構マテリアルイノベーション研究センター 機構長

東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻 教授 霜垣幸浩

工学系研究科の財務・施設を研究科長特別補佐および副研究科長として通算6年間担当してきた。当初は財務キャッシュフローを把握することができず,何にいくら使えるのかが全く分からない状況であった。これはもちろん自分の能力不足に起因しているが,合計約60億円程度の運営用資金(正規雇用教職員人件費や外部資金は含まない)の全容を理解するには相当の努力と時間が必要であった。 いろいろとバランスシートを検討していくうちに気付いたことが,施設(建物)の修繕維持費が十分に手当てされていないということであった。工学部管理の施設は主なものだけで26棟,合計約20万㎡ある。適切な維持管理費は2500円/㎡年程度と聞き,概算で5億円と計算したが,調べてみると実際には3億円程度しか手当していないことが明らかになった。この不足する2億円をどうするか,また,そもそもこの維持管理費で適切に管理運用できるかも分からず,試行錯誤を重ねることになった。本郷キャンパスの建物は老朽化していることもあり,色々と検討して分かったことは,計画的に大規模修繕や改築を行う前提で計算すると約5000円/㎡年程度の施設維持費を確保する必要があるということである。合計10億円/年となり,年間7億円も不足していた。これは雨漏りなどをすぐには修繕できずに不具合を蓄積していたことを意味する。 このような施設整備費の不足を補うにはどうすれば良いかと考えたときに,学生支援・若手研究者支援などの大学としての本来の経費を削減して捻出することは難しく,新たな収入源を考える必要があった。その中で思い至ったのが,外部への施設・設備の貸出である。本郷キャンパス近くの不動産物件を参照すると,坪単価2万円,条件の良いところでは3万円近くになっている。これは,約72,000~110,000円/㎡年に相当する。工学系研究科では戦略スペースとして50,000円/㎡年で貸出を行っており,かなり高いという印象を持っている教員も多い。しかし,民間ではそれよりも高い値段が相場となっており,民間にキャンパス内のスペースを貸し出すことができれば,収入不足を補えると考えた。タイミング良く,大学のスペースを有償で貸し出す第3者貸付というスキームができたことも分かったので,この方式の活用を検討した。その際に,慶応大学矢上キャンパスの実例を参考に,各種分析装置メーカーにキャンパス内に装置のデモルームを設置してもらうことを考えた。矢上キャンパスの場合,500㎡程度のスペースに分析装置が設置されてデモルームとして週3日機能し,残りの週2日は学内に共有設備として有償利用貸出が行われている。 実際にいくつかの分析装置メーカーと相談してみると,都内にデモ支店が欲しいと考えているメーカーが多かった。また,すぐそばにデモルームの設備を研究に使用している研究室があり,良い実例として紹介しやすいこと,使いこなしている研究室の教職員に講師となってもらって講習会を開催することができること,また,そのための講義室確保が容易であることなどメリットが多いことに気付いた。また,デモルーム設備を利用するユーザー視点で考えると,常に新型の装置を利用できること,また,メーカーの維持管理要員がいるためにその負担が少ないことがメリットとなる。 このように,メリットの多いデモルーム展開であるが,本郷キャンパスで展開する際には,自治体の定める用途地域指定が問題となることも分かった。具体的には第一種中高層住居専用地域に指定されているため,会社の事務所などを設置することができない。これを乗り越えるためには,用途地域指定の変更を行う(ハードルが高い)か,キャンパス近くの商業地域などにスペースを確保してデモルーム展開するなどの可能性があると考えている。

(c) 第5回東京大学技術発表会 実行委員会
東京大学総合技術本部